現代リスク社会にどう向きあうか 小・中・高校、社会科の実践
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現代リスク社会にどう向きあうか 小・中・高校、社会科の実践
坂井俊樹(編著 | 編著), 竹内裕一(編著 | 編著), 重松克也(編著 | 編著)
406頁 並製
定価 2,800円+税
私たちはいま、リスク社会に生きている。
原子力発電所事故と放射能、ダイオキシン、鳥インフルエンザ、BSEや口蹄疫、環境悪化による自然災害、さらには新自由主義に伴う格差や貧困、「領土紛争」などなど――。
このリスク社会にどう向きあうか。小・中高校の実践報告を中心にレポートする。
【目次】
1章 リスク社会における教育の観点と実践
2章 リスク社会が直面する諸課題
3章 リスク社会における教育実践
【はじめにより抜粋】
〈本書の試み〉
本書は、「リスク社会」という視点で現代社会を捉えなおし、この現代社会に向き合う教育実践のあり方を再構築しようという趣旨で構成している。グローバリズムの進展がリスク社会を必然化し、私たちは、今までとは異なる巨大で、同時発生または瞬く間に国境を越えて拡散する諸問題、しかも既存の科学技術や学問的知見では容易に解決しえない諸問題に遭遇、翻弄される現実に生きている。この新しい事態は、原子力発電所事故と放射能、ダイオキシン、鳥インフルエンザ、BSEや口蹄疫、社会的災害の性格をも持つ大規模自然災害、さまざまなウィルスの拡散、さらには新自由主義経済に伴う格差や貧困、資源獲得とナショナリズムがより強固になった結果の「領土紛争」など、解決が容易でないさまざまな多領域の問題発生を内容としている。
リスク社会への向き合い方は、当然、その解決の仕方や方向を同時に考え、提案していかなければならない。さもなければリスク社会の主張は、単なる将来への社会不安を扇動するだけのものであり、それを語ること自体が危険なものとなってしまう。リスク社会の向き合い方のポイントは、正確な情報伝達と、多くの人々との民主的なコミュニケーションの創造と広がりであり、また問題解決のためのネットワークの形成なども不可欠であろう。さらに既存の学問研究を相対化してみることも重要であろう。
以上のように考えると、教育実践においても、こうしたリスク社会に向き合う内容と方法をどのように開発していけばよいのか、その点が課題である。私たちは、2008年以来、新しい時代における市民教育のあり方についての議論と教育実践を追究してきた(『社会科教育の再構築をめざして―新しい市民教育の実践と研究―』東京学芸大学出版会も2009)。しかし2011年3月11日の東日本大震災は、私たちの考える市民概念の甘さを露呈し、その修正を迫ったのである。そして以後、リスク社会概念を導入し、市民性とその教育実践のあり方について集中して検討してきた。とはいっても、本書の各実践も、まだ明確な方向性を持った提案ができたわけではない。その点では、本書は現段階における私たちの中間報告としての意味合いを持つ内容としてご理解いただきたい。
最後になりましたが、各地の調査等にご協力いただいた関係者の皆様、および授業を作り上げてくれた児童・生徒の皆さんに深く感謝の意を表したい。合わせて、読者の皆様からのさまざまなご意見、ご批判を頂ければ幸いである。
(編著者を代表して・坂井俊樹)
【著者プロフィール】
坂井俊樹(サカイ トシキ)
東京学芸大学教育学部
・『ゆれる境界・国家・地域にどう向きあうか』監修森田武、共編著、梨の木舎、2009年
・『東日本大震災と東京学芸大学』(共著)東京学芸大学出版会、2013年
竹内裕一(タケウチ ヒロカズ)
千葉大学教育学部
・『地理教育カリキュラムの創造』(分担)、古今書院、2008年
・『増補版 身近な地域を調べる(東京学芸大学地理学会シリーズ)』共編著、古今書院、2009年
重松克也(シゲマツ カツヤ)
横浜国立大学教育人間科学部
・『社会科教育研究の再構築をめざして―あたらしい市民教育の実践と研究』竹内裕一他共編著、東京学芸大学出版会、2009年
(上記内容は本書刊行時のものです。)
ISBN 978-4-8166-1304-3 C0037
2013年3月発売
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